1戦目をフルセットで制したあなたたちJTは、このままの調子で2戦目もいくだろう、と私は思っていました。
しかし、勝負の世界は決して甘くはありませんでした。
田中美咲選手。
あなたは2戦目、どこか様子がおかしかった。
極度に緊張していたのか、プレッシャーを感じていたのか、顔は強張り、トスはぶれぶれでした。
特にミハイロヴィッチ選手に対するトスは、僕の母の寝ぐせのごとく荒れまくっていました。
かつて学生の頃セッターをしていた僕には、あなたの気持ちが痛いほどよくわかります。
ミハイロヴィッチ選手は、感情をよく表現する選手です。それは、もちろん喜びもですが、苛立ちやもどかしさに関しても同じ。わかりやすく空気を乱している様子がコートにいなくても伝わってきます。
僕もメンタル激弱系セッターだったので、こわいなと思う人に対するトスは、それはもうひどいものでした。ちゃんとあげなきゃ、と思うほどに手は震えて上がらなくなりました。ひどすぎてボールを投げつけられたりもしました。
プロとしてバレーボールをするあなたと比べるのも失礼な話ではありますが、あの試合のあなたをみているのは、本当に心が苦しかった。
思うようにトスが上がらず、冷静になろうとどんどんと自分の中に閉じこもっていき、周りの声が聞こえなくなっているように見えました。
最後にはもう、オーバーでいけるボールもアンダーであげていましたね。それほどまでに、あなたは追い込まれていたのだと思います。
それでも、そんなあなたを最後まで信じ、吉原監督はあなたを使い続けました。
それに対するプレッシャーもあったことでしょう。
チームプレーにおいて、誰かが一人になってしまうことは避けなければいけない。
それなのに、あのコートにおいて、あなたはひとりぼっちでいるかのようでした。
後ろからみんなを鼓舞するリベロ・小幡選手の声に、あなたは気づいていたでしょうか。
タイムアウトであなたを抱きしめる、控えセッター・柴田選手の思いに、あなたは気づいていたでしょうか。
そんな余裕もないほどに、うまくいかない状況の整理が追いつかなかったのだと思います。
きっと一番悔しいのは田中選手だと思います。
悔しくて悔しくて眠れない夜が続くかもしれない。
あなたのことなので、過度に自分を責め続けるかもしれない。
自分のせいで負けてしまったんだと。責任をとって、もう引退しようなどと思うのかもしれない。
正直言って、私はあなたのファンでも何でもありません。
あなたのプレーを学生時代から応援していたわけでもありません。
しかし、新元号なんかよりも、今はあなたのことを心配しています。
そしてこれだけは言いたい。
あの試合を最後に、バレーボールを諦めないでほしい。
もう一度、バレーボールを心から楽しんでほしい。
スタメンとして長いシーズンを通してコートに立ち続けたことは、素晴らしいことです。
3位という結果は、満足のいくものではないと思いますが、やってきたことをどうか否定しないでください。
またあなたが笑ってプレーする日を、一人のバレーボールファンとして、私は待ち望んでいます。
きっと立ち直って、またコートを駆け回ってくれると信じています。
その日まで、まずはゆっくり休んでください。
今シーズンも、おつかれさまでした。