三日坊主の三年日記

人生を、おもしろく

もがくなら もがいてみよう 最後まで

熱を注いできたものが、終わった。

二次試験の会場から駅まで歩きながら、助けてもらった人の顔がぽぽぽぽぽーんとたくさん浮かんできて、目頭が熱くなる。

これだけ力を入れて何かを頑張ったのは、本当に久しぶりだ。なぜ僕はこれほどまでに突っ走ってこれたのだろうか。

僕の半年間を、少し振り返ってみたい。

 

これは、ネットに溢れている「トビタテに受かるための方法」とかそんな有益な話ではない。 

軽い気持ちでトビタテに挑戦した何者でもないへっぽこマンが、トビタテ受験を通して少しずつ変わっていく、ありがたくもなんともないただの人間くさい備忘録。

 

 

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僕はこの夏から「子どもの外遊び」をメインに勉強するため、しばらくスウェーデンに留学する。交換留学は既に決まっているのだが、現地での生活費や渡航費、活動費にあてる資金を得るため、僕はとある奨学金プログラムに応募していた。

それが、「トビタテ!留学JAPAN」だ。

www.tobitate.mext.go.jp

 

この奨学金は自分で自由に留学計画をカスタマイズできるうえに、多くの企業の寄付によって成り立っているため、とにかく支援額がはんぱじゃない。しかも給付型なので、返還する必要もない。そこに目をつけて応募する人がたくさんいるので、倍率はとんでもなく高い。

僕はこれ以上親に負担をかけたくなかったので、ほんのできごころでトビタテに応募することを決めた。お金もらえればいいな〜〜くらいの本当になめくさった態度で、僕のトビタテへの挑戦はスタートしたのだった。

 

 

 

 

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2018年7月。

僕はまず、学内の一次締切をとりあえず超ざっくりした内容で提出し、その後トビタテのブランドマネージャーをされているもてぎさんにお会いした。

 

(もてぎさんのブログはこちら。とにかくかっこいいので見るべし。)

makicommu.hatenablog.com

 

初めての面談の日。

留学先、留学計画、やりたいこと、留学後の予定、などなど何もかもがもやっとしたまま突撃した(しかも遅刻した、すみませんでした、、)のだが、スーパー素敵な方でびっくり。

なめとんのか!帰れ!!と怒鳴られていたら心が3秒でぽっきり折れていただろう。

書類の書き方、伝え方など技術的な部分のアドバイスはもちろん、僕のざっくりすぎる舌足らずな話をあたたかく聞いてくれたうえに、どんどんポイントを抽出してうまくまとめ、言語化のお手伝いをしてくれた。留学相談ではなく、もはや人生相談。

不安でいっぱいだったが、もてぎさんのまっすぐさ、ユーモアやゆるさにとても救われたのを覚えている。

 

2018年8月。

僕のテーマである冒険遊び場についてもっと知る必要があったため、情報収集に駆け回った。

まずは、図書館で関係書籍や論文を読み漁り、専門家の先生を訪ね、日本の外遊びに関する課題を洗い出した。

僕が働く冒険遊び場(NPO法人あそびっこネットワーク)の職員さんに話を聞いたり、東京都内の遊び場に関わる人たちとつながるためにいろんなイベントに出席したりした。懇親会で「若者に未来を託すぞ」と熱い言葉をかけられたりもして、とにかく素敵な出会いにたくさん恵まれた。

また、地元福岡の遊び場に連絡してみたり、北海道の遊び場を訪れたりもした。

(詳細はこちら)

pyonsu.hatenablog.com

 

いろんな人と話し、いろんな場所をみていく中で、自分の思いや日本の外遊びの課題点が徐々に明確になっていき、留学計画書をゼロから書き直していった。交換留学先も決めて現実味が増し、ひょ〜〜〜〜〜!なんかいろいろ動き始めてるぜ〜〜〜〜って感じだった。

 

2018年9月。

トビタテの先輩(偶然にも同じ冒険遊び場にいたのだ!)に書類を読んでもらい、活動について相談すると、「君が本当にしたいことは何?」とド直球で聞かれた。合格するために書類を作ろうとしていた自分に気づき、自分の心から湧いてくる素直な声に従おうと思い直した。

 

それから、放置していた自由記述書を書くため、小学校からの仲のいい幼馴染に泣きついた。

(トビタテの書類は、主に留学中やりたいことやその動機、留学後の予定などを書く『留学計画書』と、自分自身がどういう人間かについて自由にデザインして書く『自由記述書』の二種類を提出する必要がある。)

 

彼はデザインを専攻していて、小学校の頃から抜群に絵が上手かった。休み時間に描いていたコオロギの絵が上手すぎて先生の目に留まり、壁に飾られていたのを覚えている。

 

デザインのデもわからない僕は、なんとか助けになってほしくて、僕の自由記述のイメージを伝えた。

すると彼は、「デザインってのはな、ただの飾りじゃないんよ。絵が描けないとできないもんじゃなくて、ひとつの『ソリューション』なんよ。やけん根本的なところから考え直さないかん。」とばちくそにかっこいいことを言い放ってきた。惚れた。

そこで、デザインで解決したい問題、目的、内容、イメージ等を一緒に洗い出してブラッシュアップしていき、最終的に留学内容らしく遊び心に溢れた素敵すぎる自由記述書ができあがった。

嫌味ひとつ見せずに、他人の頼みごとにこれだけ本気になってくれる友人がいることの幸せを噛み締めた。彼がピンチの時は、僕にできることは何でもしたい。

 

 

留学計画書の最終段階を、中学・高校・大学の同期、教授、外部の留学相談センターなどなどいろんな人に読んでもらっては突っ込まれ、修正を繰り返した。留学中の友人も海外から電話でアドバイスをくれた。

 

トビタテの書類は、生半可な気持ちでは書ききれない。

過去、現在、そして未来の自分と社会を真摯に見つめなければいけない。

自分はどういうふうに生きてきて、何がきっかけで今ここにいて、どういう問題意識を持っているのか。どういう社会を目指しているのか。

そのために、なぜ留学が必要なのか。なぜその留学先でないとだめなのか。留学中何をするのか。

留学後はその成果をどう日本に還元するのか。目指す社会のために、留学を経て自分はどんな人間になっているのか。

 

トビタテを受けようと決めていなかったら、向き合うことを後回しにしていたようなことを、どーーーんと突きつけられた。弱い自分、逃げて隠していた自分と向き合うのはしんどかったが、とにかく考えて考えて書くしかなかった。

 

最終提出締切数分前に完成し、ぎりぎり滑り込みセーフで一次書類の提出を完了した。同時に僕の夏も、終わりを告げた。

 

 

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2018年10月、11月。

一次書類を提出し終えた僕は、瞬く間に日常に引き戻されていった。留学のためにあれだけアクティブに動き回っていろんなとこに飛び込んでいたのが嘘のように、燃え尽きてしまった。

というよりも、トビタテのために自分と向き合ったり人と出会って話したりしているうちに、別のやりたいことがどんどんどんどん出てきてしまったのだ。

だから、カタリ場とb-labでボランティアを始めた。そこで出会う人たちが本当に素敵で、ますます引き込まれていった。

 

 

2018年12月。

学校とボランティアでせわせわとしていたり、いろんな意味でいっぱいいっぱいだった頃。

トビタテの一次書類合格の通知が来た。

 

正直に言ってしまえば、最初に浮かんだのは

「やばい、通ってしまった」

だった。

 

もちろん喜びはあった。あれだけ頑張ってきたんだから、それが認められた気がして嬉しかった。

けれど、何がこんなにざわざわしているんだろう。新しい出会いや自分の変化によって、僕の中に確かにあると思っていた気持ちはなくなってしまったのだろうか。

 

わからない。でもいったん置いておこう。目の前のことを整理しないと。

 

そうして師走はあっという間に過ぎていった。

 

 

2019年1月。

年末年始は地元でしっかりとだらだらし、東京に戻ってきた。

もう二次試験がすぐそこに迫っている。

けれど、僕の気持ちはまだ揺らいでいた。

 

途方に暮れていた僕はもてぎさんに、こんなメッセージを送った。

 

一次の提出の時点から今までで、僕の目指したい社会が大きく変化したもので、二次の内容について深めていくほど、自分を捻じ曲げているような感覚になってしまっています。

 

おそらく元々トビタテの対策自体がハードなものなので、一次の時点で本当にこの計画を実行するぞという覚悟ができておらず、ここにきて逃避反応が出てきているのかなと思います。


これはお金をゲットするためだ!と割り切って、計画とやりたいことが違っていても多少誇張したり盛ったりしていくしかないんでしょうか。
もてぎさんはそのあたりの迷いとかありましたか? 

 

すると、返事がきた。

 

私は最後まで自分の計画書が嫌いで逃げたくてしょうがなかったのですが、
(前日夜までプレゼンが完成せず、朝起きて冷静になって焦って仕上げました)

でも今思えば、嫌になる程向き合った自分に感謝でいっぱいです。そのおかげで、何だかんだ向こうに行ってからも死ぬ気でディベートをしたし、弾けて本当に自分がやりたいこともわかってきたし、自分と向き合うクセができたので留学中も相当自分の本音と向き合って剥けるものが剥けた気がします。

 

そして、留学支援の立場になってみた今私が言えるのは、

自分の留学計画完璧だと思っている人はほぼいないです。今日も、やりたいことが変わってしまった人がいましたが、結構みんなそんな感じです。人のを聴くと余計に隣の芝が青く見えるものです。

 

もう一度一次書類からやり直したい、というのも1つの手ではあると思いますが、たぶんおんなじことが起きるだろうと思います。人生あの時こうだったらと後悔してまたやり直せたとしてもまた同じ路を歩むだろう〜ってどっかの歌詞が歌っているのと同じです。

 

私は個人的には、留学計画書やプレゼンで悩んでないでとっとと海外行っちゃいな!と言いたいのですが、

ぜひ最後まで悩みたいだけ悩むことがベストだと思います。

私も実は、究極の決断と葛藤してずっと悩みっぱなしだった問題と今朝お別れをして吹っ切れました。

人間思わぬときに、思わぬエネルギーが発揮されるようです。そのタイミングは人それぞれですので、今週末までに!と焦らず、気持ちの収拾が着くまで暴走してみてください。

 

私は、今でも嵐さんとの初対面の瞬間を忘れられません。留学計画なしにしても、確実に、人としてとっても素敵なお方なので、自分に自信を持ってくださいね!


あくまでも、トビタテの二次試験で評価されることは、留学の計画書ではなく、人間田中嵐ですから。
最後まで応援しています!

 

もてぎさんの言葉に、心臓をえぐられたようだった。

僕は自分の留学計画から逃げようとして、向き合わない理由を探しているだけだったことに気づき、最後までとことんやってやろうと、決意を新たにした。

 

 

二次までの時間は限られていたが、僕はまたまた人に頼りまくった。  

 

同じ大学で一次を通過した友人と、英語科の院生のみんなにプレゼンを見てもらった。鋭いアドバイスをたくさんくれたし、何よりあたたかく応援してくれたことが本当に嬉しかった。

 

トビタテの留学成果発表会で偶然出会った大学の後輩(トビタテでは先輩)は、前日の夜中までプレゼンの練習を見てくれた。

この期間で、取り繕うことなくいろんな話をすることができる仲になったのは、トビタテがあったからこそだ。

 

 

 

そして、二次試験当日。

早起きした僕は、自分の留学テーマに合わせて色を出すために、半袖短パン帽子虫かごという外遊びスタイルで家を出た。

家から駅までの道のりを、少し遠回りしながら歩いた。

とてつもなく胸が高鳴っている。

今のこの気持ちを、僕の思いを聞いてほしい。これから同志となる人たちに、早く会いたい。

 

会場に着くと、予想に反してみなさんしっかりと防寒対策を施した私服を着ていたので、少々浮いてしまった。いろんな意味で寒い。しかし気にしない。

 

面接官の方は、出会った瞬間に爆笑してくれた。「日本で初めて文科省にだんごむしを連れ込んだ人」のお墨付きをいただいた。ありがたや。

とても気さくで熱い方で、面接というよりも対話だった。こんなに楽しい面接は初めてで、瞬く間に時間がすぎ、最後に固い握手を交わしてお別れした。

 

グループディスカッションも、とても楽しかった。受験者それぞれの背景や、目指す社会への思いが溢れていて、 奮い立たせられた。自分の思いも、はっきりと伝えることができた。

 

その日の夜、僕はまたまたもてぎさんにメッセージを送った。 

もてぎさん、遅くにすみません。どうしてもお伝えしたかったので!

今日、二次試験を終えました。面接もプレゼンもGDも交流会も、全部が全部最高に楽しかったです。すべてを出し切ったので、結果がどうであれ何一つ後悔はないです!!

 

トビタテを受けると決めてから、もてぎさんに何度も何度も助けられ、勇気付けられ、ここまでくることができました。
幾度となく、もうやめようかと思いました。自分と向き合うこと、留学計画と向き合うことがつらくなって、投げ出してしまいたくなったときが何度もありました。

それでも最後にとことん向き合いたいと思えるようになったのは、もてぎさんをはじめ、支えてくれた人たちがいたからです。
自分のためにトビタテを受けることを決め、自分一人でやっていくものだと思っていました。でも、たくさんの人に頼って助けられているうちに、トビタテに挑戦することは自分一人のためのものではなくなっていました。


僕は周りのたくさんの人に生かされ、支えられて立っていられているんだな、と心の底から感じられた期間だったなと思います。受かったわけでもなんでもないのに、悩んで立ち向かってよかったなとほんとに思います。

もてぎさんに出会えてほんとうによかったです。
本当に本当に、ありがとうございました!!

 

心から溢れ出る言葉を、そのまま伝えることができた。

こうして、僕のトビタテへの挑戦は終わった。

 

 

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最初は生半可な気持ちだった。

けれど、手探りでもがいていく中で、自分の過去と今が繋がっていて、未来にも繋げていきたいという確かな思いが芽生えた。

たくさん悩んで、もう辞めようかとうなだれて、迷って迷って迷いまくった。

今、迷ってよかったと心から思える。

格通知を受け取ったからではない。

自分が、一人ではないと思えたから。

 

最初は誰しもちっぽけで、弱くてダサいんだから。その姿のまま、もがいて戦って考えて、少しずつ進んでいけばいい。

僕はもがくきっかけが、たまたまトビタテだった。

たまたまだからこそ、トビタテに挑戦してよかった。

トビタテを通して、素敵な人たちに出会えてよかった。周りにいた素敵な人たちのあたたかさに気づけて、本当によかった。

 

 

まだ始まったばかりだけど。留学はこれからだけど。

忘れたくないからちゃんと書き残しておこう。

 

自分の強みがわからない。

大したことを成し遂げたことがない。

具体的にやりたいことなんかわからない。

社会を変えたいという強い思いもない。

そんな言葉で自分を縛ってごまかして逃げて、本当の自分と向き合えていない人へ。

自分の持つ羽根に気づかず、飛び立つ勇気のない人へ。

大丈夫、僕もそうでした。

 

へっぽこな僕の等身大のストーリーが、そんな人たちの背中を少しでも押せたらいいなあ、と、密かに願う。